千早くんは、容赦が無い
 千早くんの言葉の意味を考えていたら、眼前のミニトマトで私はあることを思い出す。

 そう言えば千早くんこの前、ここに植えられているのがミニトマトだって、分かっていた。

 私が教えてくれたから知ってるんだよって感じのことを千早くんは言っていたけれど、やっぱり今考えてもそんなことを話した記憶は無かった。

 もしかして、私が「ちぇりー」のふりをして出会う前から。

 千早くんは私のことを知っている……?

「昔っていつのこと? 『アオハル』で連絡を取り合ってた時かなあ。もしかして、その前から私たちって会ってる?」

 思わず真剣な声音で聞く私。

 だけど本当に気になってしまって、私は千早くんの顔を見つめた。

 ――すると。

「……あー。えーっとね」

 千早くんは雑草の生えている土から顔を上げて、虚空を眺めた。

 何かを考えて目を泳がせているような、そんな印象を受ける。

 だけどそれも一瞬のことだった。

「いや、知り合ったのは『アオハル』で、リアルであったのはカフェで俺が告白した日だよ。亜澄も知っての通り」

 はっきりと千早くんはそう答えた。

< 139 / 221 >

この作品をシェア

pagetop