千早くんは、容赦が無い
「いや……。授業さぼってるとか、悪い奴と遊んでるとか、その辺は理数科のサッカー部の友達に聞いた話だから、俺も本当かどうかは分からないけど。でも、金髪でだるそうに歩く千早は俺も何度か見かけたから、まるっきり嘘ではないと思うんだよなあ」

「嘘……」

 まだ信じられなくって、私はかすれた声を出してしまう。

 だけど陸は嘘をついて人を悪く言うような奴じゃない。

 残念だし、受け入れたくないけれど……。

 ある程度は信憑性のある話みたいだ。

「あの時の千早、何かあったのかなあ。サッカー部にいた頃はすげーいい奴だったんだけど。俺、まだあいつが金髪だって思い込んでたから、さっきは一瞬誰だか分からなかったんだよ」

「そうだったの……」

 だから陸は「あれ!? もしかして千早っ? マジ!?」って、千早くんを見て驚いていたんだ。

 千早くん、一年生の時に一体何があったの……?

 私が知っている千早くんと、陸の言っている彼の印象がやっぱりどうしても結びつかなくって。

 陸が目の前にいるというのに、私は黙りこくって考えてしまう。

 ――すると。

「……なあ、亜澄」

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