千早くんは、容赦が無い
 陸が緊張した表情で私に声をかけてきた。

 真剣そうな様子にも見えて、私はさすがに陸に意識を集中させる。

「陸、何? どうしたの?」

「亜澄……。もしかしてあいつが……千早が、好きなのか?」

「えっ……!?」

 恐る恐る陸が聞いてきた質問が、まったく想像していない内容で。

 私は虚を衝かれたんだ。

「えっと、それは……」

 それ以上は、私は言葉が出てこない。

 どうして陸は私の気持ちが分かったんだろう?

 それに、なんでそんなことを陸が聞くんだろう。

 千早くんを好きという気持ちは確かにあるけれど、まだ親友の桜子にすら打ち明けていない。

 自分の中にだけある、秘密の気持ちだ。

 だから陸の問いにすぐに答える気にはなれなくって、私は黙ってしまったんだ。

 あー、でも否定しないと「好き」って言っているようなものだよね……。

 だけどやっぱりそれ以上は何を言ったらいいのか、わからなかった。

 すると陸は深くため息をついた。

 なぜか、どこかやるせなさそうな顔をしている。

 ――そして。

「あのさ。こんなこと言いたくないんだけど」

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