千早くんは、容赦が無い
 いつもの千早くんなら、用事以外にも「昨日見たテレビ面白かった~」とか「今日の学食、カツ丼かラーメンかで迷ってるわ」とか、他の他愛のない話題も入れてくれるのに。

 一行だけで帰ってきたメッセがなんだかひどく冷たい文字列に見えて、焦った私はすぐに返事をする。

『そうなんだ~、すごく残念。じゃあ今日はミニトマトの世話でもしようかな! また明日ね~』

 千早くんも気にかけてくれている、学校の花壇のミニトマト。

 きっとそれについて何か反応してくれるに違いない、と私は千早くんの返事を期待する。

 だけどその後一向にスマホが震えることはなかった。

 既読にはなっているのに……。

 話題が終わった時ですら、いつもの千早くんならスタンプくらいは返してくれる。

 明らかに普段と様子が違うのが、スマホ越しでも分かってしまう。

 四時間目の授業中、落ち込んでいたらふと視線を感じた。

 見てみると、隣の席の陸が心配そうに私を見ていた。

 だけど私が目を合わせるなり、陸は気まずそうに視線を逸らす。

 あの後、陸とは話していない。

< 152 / 221 >

この作品をシェア

pagetop