千早くんは、容赦が無い
 桜子の「千早くん、陸と同じ考えなんじゃない?」という言葉の意味が、やっと分かった。

 陸は「正直、あいつに近寄らない方がいいと思う」って、私を心配して言ってくれた。

 それと同じで千早くんも、「こんな俺は亜澄に近寄らない方がいい」って考えたってことかな?

 もちろん、桜子の推測で間違っている可能性もあるけれど……。

 千早くんが私を避け出したタイミングを考えると、あながち間違いじゃないんじゃないかって私には思えた。

「たぶん今の千早くん、すごく臆病になっているんじゃないかなあ」

「臆病……?」

「うん。亜澄に嫌われる前に離れようって思ってる気がする。もしかしたら、もう嫌われてしまったから合わせる顔がないって、考えちゃってる可能性も……」

「私が千早くんを……!? 嫌うわけなんてないじゃないっ!」

 あり得ない!と強く思った私は、思わず叫んでしまう。

 教室中にその声が響き渡ったようで、クラスメイト達が驚いたように私を見ていた。

「ごめーんみんな、なんでもないよん」

 恥ずかしくて固まってしまった私に代わって、桜子が軽い調子でみんなに弁明してくれる。

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