千早くんは、容赦が無い
 その一言のおかげで、クラスメイト達は私に注目するのをやめてくれた。

 よかった……。

 それと、陸はまだ来ていないみたいなのもよかった。

「桜子、ありがと」

 ほっとして私はお礼を言うと、桜子は首を振る。

「いーよ、そんなこと。……でも、叫んじゃうくらいの気持ちがあるなら、ちゃんと千早くんに伝えなよ」

「えっ……?」

 気持ちを伝える?

 私が千早くんに?

 戸惑っていると、桜子は真っすぐに私を見つめて、今までになく真剣な声音でこう言った。

「そうだよ。あんだけあんたに好き好きかわいいって言っていた千早くんが、今は後ろ向きになっちゃってるんだから。どうせ亜澄はまだ、彼に好きって言ってないんでしょ?」

「えっ……。な、なんで。私桜子に、千早くんのことを好きになったって言ってないよね……?」

 まだ自分ひとりでゆっくりと考えたかったから、桜子にはまだ言っていなかったのに。

 すると桜子は得意げに微笑む。

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