千早くんは、容赦が無い
「だってやっぱり、私は陸の言っていることも今の千早くんのことも信じたいんだもん。だから過去にもし千早くんが荒れていたとしたら、きっと何かわけがあったんだって思ったの」

 千早くんが自暴自棄になってしまうような、大きな理由があったんだ。

 私にはそうとしか思えなかった。

 すると千早くんはふうと息を漏らした。

 なんだか安心したような、気が抜けたような、そんな息のつき方に見えた。

 そしてぼそりと呟くようにこう言った。

「……あー。やっぱり俺亜澄が好きだ。離れようとしたけど、無理っぽいなあ」

「え!?」

 本日二度目の、千早くんからの「好き」。

 それにももちろん意表をつかれたけれど、千早くんの言葉の後半にはもっと驚かされた。

 離れようとした……?

 私のことを好きなのに?

「千早くん、どういうこと……?」

 あまりにも意味が分からなくて私がそう尋ねると。

 千早くんはまたサッカー部の方に視線を合わせて、どこか遠い目をしながら説明を始めた。

「俺、小さい頃からサッカーやっててさ。自分で言うのも何なんだけど、まあ結構うまかったんだよね」

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