千早くんは、容赦が無い
「……うん。陸にもそう聞いたよ」

 それに、体育でソフトボールをやっていた時、とても上手だった。

 あの運動神経の良さなら、サッカーだって相当実力があったはずだ。

「楽しかったし、本気で練習もしててさ。この学校のサッカー部は強かったし、全国大会も夢じゃなかったから、一年の時の俺はサッカー一筋で、他のことには目もくれないくらいだった」

 実際、今年は全国大会まで駒を進めて、結果は準優勝だった。

 ……千早くんは、すでに部にはいなかったけれど。

「そんなに頑張っていたのに、どうして……」

「実は俺、一年の夏休み中に交通事故にあって怪我しちゃってさ」

「え!?」

 衝撃の事実に、私は息を吞む。

 陸もそんなことは言っていなかったから、知らなかったんだろうけど……。

 まさか千早くんがそんな目に遭っていだなんて。

「だ、大丈夫だったの!? 怪我はっ? 痛くない!?」

「あはは、もう一年くらい前のことだよ。今の俺、ピンピンしてんじゃん」

 思わず矢継ぎ早に質問してしまう私だったけれど、千早くんは呆れたように笑う。

< 165 / 221 >

この作品をシェア

pagetop