千早くんは、容赦が無い
 事故に遭ったなんて言われたから、すごく焦っちゃったよ……。

 確かにもう結構前のことだし、今の千早くんが元気そうだから、大事には至らなかったみたいだ。

 それはよかったけれど……。

「でも、怪我は治ったんでしょ? それならどうしてサッカー部を辞めちゃったの?」

 怪我をした直後はさすがに休まなきゃいけないだろうけど、治ったんなら復帰をすればいいんじゃないかって簡単に私は考えてしまう。

 すると千早くんは、どこか悲し気に微笑んだ。

「まあ一応治ったよ。……日常生活を送れるレベルにはね。でも複雑骨折しちゃった右足だけは、もう元のように激しい運動はできなくなったんだ」

「え!?」

 複雑骨折……!?

 日常生活ではほとんど耳にすることが無いような怪我の名前に、私は身をすくませる。

 もう元のように激しい運動はできない、って?

「で、でも体育のソフトボールの時は、千早くんすごく上手に……」

 ピッチングもバッティングも、他を寄せ付けないほどの上手さで活躍しているように見えた。

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