千早くんは、容赦が無い
「そんなはずないっ! 私が千早くんを嫌うわけなんてないじゃない! だって私、千早くんのこと大好きなんだからっ」

 そんなことは絶対にありえないって、ただ私は千早くんに伝えたくて。

 勢いよく、言葉にありったけの力を込めて、叫ぶように私は言ったんだ。

 あまりにも力んでしまったせいか、呼吸が荒くなって私は肩で息をしてしまう。

 千早くんはきょとんとした顔をした。

 目を瞬かせながら、驚いたような表情で私を見ている。

 その顔を見返しているうちに、私ははっとして我に返った。

 ……わっ!

 私今、大好きって千早くんに言っちゃった!

 もちろん最初から伝える予定だったけれど、こんな風に怒鳴るように言うつもりじゃなかったのに。

 それに全然心の準備ができてなかった。

 大それたことをしてしまったと気づいた私は、「あ、あの、千早くん。えっと……」と、覚束ない声を上げてしまう。

 ――だけど。

「亜澄、俺のこと初めて好きって言ってくれた。……やべ、めっちゃ嬉しいわ」

 ほんのりを頬を赤らめて、千早くんは微笑む。

< 169 / 221 >

この作品をシェア

pagetop