千早くんは、容赦が無い
 面倒ごとを千早くんにはすごく前向きに捉えられていたみたいで、私は意外だった。

 でもよく考えたら、千早くんの気持ちもわかる気がする。

 他人から見れば面倒にしか思えない部分も、好き同士なら魅力にすらなってしまう。

 過去の千早くんを私は見てはいないけれど……。

 金髪になってやさぐれた様子の千早くんを想像してみたら、それはそれでかっこいいかも……と思ってしまう自分がいた。

 本当に、好きっていう気持ちはすごい。

「私だって。千早くんが私をそういう風に受け入れてくれるように、受け入れたいなって思うよ」

「……ありがと、亜澄」

「あ、でも千早くんは怪我の件からは立ち直ったってことだよね?」

 もう激しい運動はできないっていう医者に言われているから、さすがにサッカー部への復帰は難しいみたいだけど。

 髪の毛は地毛っぽい色に戻っているし、学校だってちゃんと来ているみたいだ。

「うん。もう健全に過ごしてますよー」

 私の問いに、千早くんは冗談交じりに答えた。

「うん、そうみたいだね。もう吹っ切れたんだ?」

「そうだね。去年の冬前くらいには」

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