千早くんは、容赦が無い
「まー、元々前向きな方ですから。……ってか、昔のことよりこれからのことっしょ」

「これからのこと?」

 私が首を傾げると、千早くんは途端に真剣な目になって見つめてきた。

「ち、千早くん……?」

「俺は亜澄のことが好き。そして亜澄も俺のことが好きって言ってくれた。それならさ、もう俺たち付き合うしかなくない?」

「あ……!」

 千早くんの言葉に、今初めて私は気づかされた。

 確かに私たち、両想いなんだ。

 とにかく千早くんに自分の気持ちを伝えなくっちゃって、それだけで頭がいっぱいで。

 その後のことを、私は今まで全然考えてなかったんだ。

 で、でも千早くんの言う通りだよね。

 今さらしり込みする理由なんてない。

 ――だけど。

「そ、そう……だね」

 私は恐る恐る言葉を紡ぐ。

 男の子と付き合うこと自体初めてで、しかもその相手がかっこいい千早くんだなんて、恐れ多く思ってしまって。

 こんなの夢なんじゃないかって、やっぱり信じられなかったんだ。

 だけど千早くんは、私の言葉を聞くなり瞳を輝かせて微笑んだ。

 ――そして。

「よっしゃ!」

「わっ!?」
< 174 / 221 >

この作品をシェア

pagetop