千早くんは、容赦が無い

 勢いよく千早くんが私に抱き着いてきたから、思わず驚きの声を漏らしてしまった。

 その後も千早くんはぎゅっと私を力強く抱きしめる。

 少し痛いくらいだったけれど、全然嫌ではなくって。

 千早くんの体温が伝わってきて、じわじわと嬉しさがこみ上げてきた。

「じゃ、亜澄。これから、よろしく」

 少し力は緩めてくれたけれど、依然私を抱きしめたまま、千早くんは目を合わせて言う。

 今までで経験した中で、一番近くに千早くんがいる状態で、そんなことを言われてしまったら。

 私の心臓はもう、爆発寸前だった。

「は、はい。よろしく、お願いします……」

 やっとのことで私はそう言うと、千早くんはまたぎゅっと手に力を込めたんだ。

 その後私たちは手を繋いで一緒に帰った。

 私よりも一回り大きな千早くんの手のひらは、とても温かくて、優しい感触で。

 千早くんと別れた後も、自分の手にその感覚が残っている気がして。

 私はニヤニヤしながら、手のひらを握り締めてしまう。

 千早くんにちゃんと自分の気持ちを伝えられてよかった。

 そして、なんと彼と付き合うことになって。

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