千早くんは、容赦が無い
 今日、千早くんと私は気持ちを確かめ合って付き合うことになったけれど。

 もし、千早くんが好きになった『ちぇりー』が私のことじゃなかったとしたら……?

「ど、どうしよう……」

 思わず、その場で立ち尽くしてしまう私。

 千早くんの過去のことも明らかになって、全部がいい方向に転がったって思っていたけれど。

 いい方向どころか、前提からして間違っているかもしれないんだ。

 千早くんに、ちゃんと真実を言わなきゃいけないよね……?

 私は本当は『ちぇりー』じゃないんだって。

 最初に出会ったあの日、桜子に頼まれて私が代わりで来たんだって。

 だけどその日いきなり千早くんが告白してきたから、その後どうしたらいいかわからなくなっちゃったって。

 うん、正直に打ち明けなくっちゃ。

 ――だけど。

 もしそのせいで千早くんに嫌われてしまったら?

 俺が好きなのは亜澄じゃなくって桜子ちゃんだったんじゃんって言われてしまったら?

 想像するだけで、私は怖くてたまらなくなってしまった。

 千早くんに拒絶されることが。

 この関係が壊れてしまうことが。

< 177 / 221 >

この作品をシェア

pagetop