千早くんは、容赦が無い
 だからなんて陸が怖い顔をして私にこんなことを言ってくるのか、意味が分からなかった。

 すると陸は深くため息をついて、呆れたような顔した。

「亜澄、マジで鈍感すぎ。俺結構アピールしてたつもりなんだけど」

「え?」

 ますます意味が分からなくなって私は首を傾げる。

 陸は瞳に真剣な光を湛えて私を見つめた。

 ――そして。

「俺が亜澄のことを好きだからに決まってんじゃん」

 はっきりとした声で、そう言った。

 一瞬何を言われているのか理解できなかった。

 あまりにも予想外過ぎて。

 陸が、私のことを……?

 陸とは家が近所で、小さい頃から一緒に遊んでいて。

 私には男だとか女だとかそんな意識はなくって、ずっと仲のいい幼馴染で。

 本当に、まったく、陸が私にそんな想いを抱いているなんて、微塵も考えていなかった。

 だから私は、とてつもなく驚いてしまった。

「う、嘘……」

 あまりに信じられなくて、思わずそんな言葉が出てしまう。

「嘘じゃねーし! 悪いけど小さい頃からずっと! 俺は亜澄一筋だよっ」

 陸はやけくそになったらしく、叫ぶように言った。

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