千早くんは、容赦が無い
 小さい頃から、ずっと……。

 それなのに私はそんな想いにはまったく気づかずに、長い間陸と一緒に過ごしていたんだ。

 なんだか陸に対して、とても申し訳なくなった。

「ごめん、私ずっと気が付かなくって……」

「……いいよ。俺だって告白する勇気、ずっと持てなかったし」

 陸は少し照れくさそうに言った。

 小さい頃からずっと私を見て、好きでいてくれた陸。

 単純に嬉しかったし、深い感謝の気持ちが沸き上がってきた。

 ――だけど。

「ありがとう、陸。……でもね」

「うん」

「ごめんなさい。私が好きなのは千早くんなの。今は付き合ってるし……」

「…………」

 陸は口を引き結んで、俯いた。

 しばらくの間、沈黙が場を支配する。

 私もこれ以上はなんて言ったらいいかわからなくって、黙ってしまった。

 ――すると。

「……でも。千早が好きなのは『ちぇりー』だろ。亜澄じゃないかもしれない」

「そ、それは……」

 再び目を背けたい事実を突きつけられて、私はたじろいでしまう。

 陸は顔を上げると、切なそうな歯痒そうな、複雑な表情を浮かべていた。

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