千早くんは、容赦が無い
「……そんな本当のことも言えない関係で、付き合っていいのかよっ」

「だ、だって! 私本当に千早くんのことを好きになっちゃってっ。でも、千早くんはそうじゃないかもしれなくって……! 私は『ちぇりー』じゃないんだ、あの日は桜子の身代わりで会いに行ったんだなんて言ったら、千早くんが離れちゃうかもしれなくって! もう、怖くて……!」

 私は泣きそうになりながら、必死になって言った。

 陸の言うことはもっともだと思う。

 私だってそんなことは分かっている。

 でも千早くんの笑顔が、「好き」っていう言葉が、私に向けられなくなってしまうかもしれないって考えると。

 怖くて怖くてたまらなくって。

 どうしたらいいのかわからなくって。

「……それ、ほんと?」

 突然、背後から掠れたような声が聞こえてきた。

 聞き覚えのある大好きな声に、私の心臓は凍り付く。

「ち、千早!?」

 目の前の陸が、私の背中の先を見て目を見開いた。

 千早くん……?

 恐る恐る振り返ると、そこには驚いたような顔して立っている千早くんがいた。

「お前、どうしてここに?」

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