千早くんは、容赦が無い
 ふたりって仲悪いのかなと、私は不安になってしまう。

 でもこれだけいろいろ言い合えるのは、逆に仲がいいってことなのかな……?

 そんな風に私が考えていると、陸はきりっと真面目そうな顔をして、こう言った。

「……おい千早。亜澄をちゃんと大切にしないと許さないから。もし泣かせでもしたら、俺が亜澄を取っちゃうからな」

 千早くんに対して宣戦布告するような陸の言い方に、私は虚を衝かれてしまう。

 すると千早くんは、超然とした笑みを浮かべた。

「世界一大切にするし。泣かせるなんて、絶対にしないから」

 はっきりと、断言するように千早くんは言う。

 私の胸にその言葉が深く響く。

 そして胸の中でもう一度『世界一大切にするし』という千早くんの言葉を響かせると、嬉しいやら恥ずかしいやらで、私は頬を染めてしまった。

「へいへいそーかい。ま、せいぜい頑張れば」

 陸は不貞腐れたように言う。

 ――すると。

「皆さんお揃いで! おはよー!」

 桜子が私たち三人の元へと駆け寄ってきた。

 私たちが挨拶を返すと、桜子ははっとした顔をして陸の袖を引っ張る。

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