千早くんは、容赦が無い

　千早くんと付き合い始めてからしばらく経つというのに、相も変わらず私は彼の一挙一動にドギマギさせられてしまうのだった。

　いつかこんな千早くんに慣れる日はくるのかな……。

「そ、そうだね」

　やっぱり恥ずかしって、私はたどたどしく答える。

　絶対今、顔真っ赤になってるよ……と思っていると。

「亜澄って、すぐ顔が赤くなるよね」

　千早くんが私の顔を覗き込んできて言う。

　至近距離で見える、ガラス玉のようなきれいな瞳に、さらに私の心臓は高鳴ってしまった。

「え、あ……。だ、だって千早くんがすぐに容赦なくドキドキさせるような言ってくるから……。そ、そろそろ慣れたいんだけどっ」

「慣れなくていいよ。そんな亜澄がかわいいから」

　私の髪を優しく撫でながら、千早くんは言う。

　相変わらず私の瞳をとらえて離さない千早くんの目。

　私は身動きが取れなくなって、千早くんを見つめ返すことしかできない。

　すると千早くんが瞳を閉じたかと思うと、一瞬唇に柔らかい感触があった。

　本当に一瞬だったというのに、その感触はやたらと印象的で。

　え、あ、今の……。

　キス……だよね？