千早くんは、容赦が無い
 と、とにかくこのままでは私が「ちぇりー」じゃないって、「セン」くんにバレちゃう!

「えっと……。あっ、ご、ごめん『セン』くん! 私用事思い出しちゃったあ!」

 声が裏返りそうになるのを堪えて、白々しく私は言う。

 変なことを言う前に去った方がいいって私は思いついたんだ。

 少しは会話できたし、もう帰ったって大丈夫だよね⁉

「えっ、そうなの?」

「う、うん! ごめんねっ」

 戸惑った様子の「セン」くん。

 でも「とにかくバレる前に退散しなくては」としか今は考えられない私は、早口で答えて席を立つ。

「ほんとごめん! また『アオハル』でね!」

 ここを乗り切れば、私はお役御免なはず。

 あとは桜子に託せば、うまくやってくれるだろう。

 本当の「ちぇりー」である桜子が。

 そして、「セン」くんに背を向けて立ち去ろうとした私だったけれど。

「待って、『ちぇりー』。俺、好きだ」

 背後から呼び止められて、私は思わず足を止めた。

「えっ、何が?」

 振り返ってそう尋ねる。

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