千早くんは、容赦が無い
 私を呼び止めてまで、何について好きをアピールし始めたのだろうと、さすがに気になったんだ。

 「セン」くんは真っすぐに私を見つめていた。

 大きな瞳は吸い込まれるように深い光を放っている。

 思いがけない彼の真剣な表情に、私はたじろいでしまった。

「『セン』くん……?」

「だから、『ちぇりー』のことが」

「え?」

「俺は『ちぇりー』のことが好きなんだ」

 「セン」くんは私を見つめながら、はっきりとそう言った。

 だけど私はしばらくの間言葉の意味が理解できなくて、呆然と立ちすくんでしまった。

「え……? 『セン』くんが、私のことを好き……?」

 頭の中がぐるぐると混乱する。

 さっき初めて会ったばかりの男の子からの告白。

 それも私は、正体を偽って会っているという、複雑な状況。

 もはやなにがなんだか、分からない。

「うん。だから付き合ってよ」

「付き合う……!?」

「とりあえず、クラスと本名教えて」

 段々と、状況については把握してきた私。

 だけど相変わらずどうしたらいいのか、皆目見当もつかない。

< 30 / 221 >

この作品をシェア

pagetop