千早くんは、容赦が無い
 気になった私が尋ねると。

「え? 別にそんなことないけど」

 麗奈は普段のように気さくそうな笑みを浮かべて答える。

「そうなの? なんだか疲れてるように見えたからさ」

「あー、もう少しでコンクールだから練習が大変でさ。そのせいかもしんない」

 そっか、確かもうすぐ吹奏楽のコンクールがあるんだっけ。

 麗奈は中学で吹奏楽部に所属していて、クラリネットを担当していた。

 とても熱心にやっていて、休みの日もほとんど毎日部活に行っている。

 私も麗奈の部の定期演奏会には何度か行ったけれど、堂々とクラリネットを吹く麗奈の姿を見ると、毎回感慨深い気持ちになる。

 それで、一年に一度の大きなコンクールがあるから頑張らなきゃ!って少し前に言っていた。

 麗奈、中学校に入ってからは本当に吹奏楽一筋だもんね。

 噂によると麗奈はすごくモテていて、いろんな男子に告白されているらしいけど、吹奏楽に集中したいからお付き合いは全部断っているんだとか。

 そこまで本気で取り組んでいるのだから、姉としても頑張ってほしいと思う。

「そっか、それならよかった」

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