千早くんは、容赦が無い
 話題を間違えたら、私が実は「ちぇりー」じゃないってバレてしまうかも……。

 そんな風に私が悩んでいると。

「今日、体育の後数学だったんだけど、疲れてうっかり寝ちゃったら先生に注意されたわー」

 本当に仲のいい友達に対して話すように、千早くんはさっぱりとした感じで声をかけてきた。

 え、数学で注意された?

「数学ってもしかして田代先生!?」

「そーそー」

 やっぱり!

 同じ先生に同じ日に注意されていたことに、私は親近感を覚えなんだか嬉しくなってしまった。

「わ、私も今日よそ見してたら、田代先生に注意されたよ」

「えっ? 亜澄って先生に注意とかされるキャラなの?」

「あっ。普段はあんまりないんだけど、今日はたまたま……」

 体育で活躍している千早くんに見惚れていたから注意されましたなんてもちろん言えなくて、私は適当に言葉を濁す。

「だよなー。なんか亜澄、真面目に授業受けてそうだもん」

「うーん、だいたいはそうかな。でも、なんでそう思うの?」

「そんなの見てりゃ、分かるっしょ」

 少し笑って当然のように千早くんは言う。

 見てりゃ分かる?

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