千早くんは、容赦が無い
 でも、昨日私たちは初めて会ったばかりで、千早くんが私のことを見る機会なんてほとんどないはずだけどなあ。

 「アオハル」での「ちぇりー」に、真面目な印象でも受けたのかな。

「俺は授業中ついぼんやりしちゃうことがあるから、田代先生に結構ちくちくいわれんだよね。今日も厭味ったらしく問題当ててきたし」

「えっ、それまで寝てたんだよね? 大丈夫だった……?」

 私だったら、それまでの説明を聞いていない状態で問題を当てられたら、絶対に答えられないと思う。

 だけど千早くんはちょっと得意げに微笑んで、こう答えた?

「ふっ。こう見えても俺結構数学は得意なんだー。だからちゃんと答えたんだけど、先生は俺に恥をかかせたかったみたいで、気に食わなそうな顔してたわ」

「えっ、すごいね!」
 
 理数科なんだから理系なんだろうとは思っていたけれど、先生が意地悪でさしてきた問いにすぐに答えられるんだから、私の想像以上に千早くんは成績がよさそうだ。

「千早くん、すごいなあ。私は数学苦手なんだよね……」

 国語とか英語とかの文系科目の方が、私は得意だ。

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