千早くんは、容赦が無い
「あー、うん。俺は帰宅部っすね」

「そうなんだねー。運動得意なのに」

「えっ、なんで知ってるの?」

「あっ……。今日千早くんのクラスが体育でソフトボールしてるの、たまたま見えて。私、窓側の席だから」

 ガン見していてそのせいで先生に注意されたなんてもちろん言えなくて。

 私は「たまたま」という言葉を自然と強調してしまった。

「そうだったんだ。まあ、運動は好きなんだけどさ。同じくらいのんびりするのも好きだし」

「あはは、私ものんびりタイプだから帰宅部だよ。でも私は運動音痴だからいいけど、千早くんはもったいない気がするなあ。あ、なんだかサッカー部っぽいよね!」

 千早くんが、サラサラの髪を靡かせてボールを蹴る姿が瞬時に想像できてしまった。

 女の子にキャーキャー言われながら試合に出ていそうだなあ……。

 なんてことを思いながら、何気なく私はそう言ったのだけど。

「……うーん。そうかなあ」

 あれ?

 千早くんは微笑んでこそいたけれど、少し表情が曇った気がした。

 私何かまずいこと言ったかな……!?

 もしかして千早くん、サッカー嫌い?

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