千早くんは、容赦が無い
 なんて、私が不安を覚えていると。

「ところで亜澄は? 部活は入ってないみたいだけど、何か趣味とかあるの?」

 そう尋ねてきた千早くんの表情は、爽やかな微笑み。

 なんだ、暗い顔をしたように見えたのは私の気のせいだったみたい。

 安心した私は自分の趣味を答えようと口を開きかけたけど……。

 そういえば私の趣味って、園芸じゃん。

 めちゃめちゃ地味じゃない?

 たぶん話しても盛り上がらないよね……。

 言うか言わまいか迷ってしまった私だったけれど、これ以上千早くんに隠し事はしたくない。

 ただでさえ、大きな嘘をついているというのに。

「えっと私は、花とか野菜とか育てるのが好きで……。園芸って言うと、分かりやすいかな」

 正直に打ち明けることを決めた私は、恐る恐る言った。

 たぶん千早くんは興味ないだろうなあと思った私だったけど。

「へー! 生産性があって有意義な趣味でいいじゃん」

 そう言った千早くんの声は、今までよりも少しテンション高めに聞こえた。

 予想外の食いつきに私は驚いたけれど、素直に嬉しかった。

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