千早くんは、容赦が無い
「あー、なんかかわいそうな気もするよね。でも残しておくと、風通しが悪くなって病気や虫がつく原因になったりするんだ。あと、芽が多いと栄養が分散されちゃって実が小さくなっちゃうから、生えてきたら取ったほうがいんだよね」
「へー、なるほど……。それにしても、『かわいそう』って思うのは、さすが亜澄だなあ」
「えっ、どういうこと?」
意味が分からず、怪訝な顔をして私は尋ねる。
「いや、ミニトマトに対してかわいそうって思えるって、いいなって。本当に大事に植物を育てるんだなーって感じた」
何気ない口調で千早くんの口から放たれたその言葉。
千早くんは、「よし、摘むわー」と言いながら、脇芽を探し始めている。
だけど私は、自分の植物に対する思い入れを千早くんが理解してくれた気がして、すごく嬉しい気持ちになっていた。
しばらく脇芽を摘み始めた千早くんを見て、思わず嬉しさに浸ってしまう。
おっと、いけないいけない。
私も早く、摘み始めないと。
――ん?
待てよ。
「あれ、千早くん。私ここに植えてるのがミニトマトだなんて言ったっけ」