千早くんは、容赦が無い
 そんなこと、説明した覚えがなかった。

 だけど千早くんは、「ミニトマトに対してかわいそうって思えるって~」って、さっき言っていた。

 園芸のことをよく知らなかったら、まだ花も咲いていない苗を、これはミニトマトだなんてわからないんじゃないかな。

 すると千早くんは、一瞬ハッとしたような顔をして作業する手を止めた。

 だけどすぐにいつもの爽やかな笑みを浮かべて、こう答えた。

「あー、うん。言ったよ、昨日花壇の話をした時に」

「そうだったっけ?」

 記憶にないけれど、千早くんがそう言うのなら言ったのかも?

 まあ別に、どうでもいっか。

 と、些細なことなので私は気にしないことにした。

「探しだして摘むの、結構楽しいな」

 作業をしながら、本当に楽しそうに千早くんが言うので、私は嬉しくなった。

「あ、分かる!?」

「うん、なんかミニトマトを世話してる感ある」

「そうそう、これでおいしい実をつけるんだぞーって気分になるの!」

「はは、実ができるの楽しみだね」

「うん!」

 そんな風に楽しく会話をしながらやっていたら、あっという間に脇芽は摘み終わった。

< 70 / 221 >

この作品をシェア

pagetop