千早くんは、容赦が無い
 あれ、なんで麗奈こんなところでひとりで練習しているんだろう?

 確か、この時間はまだ学校で部活をやっているはずだよね。

 今日は部活が休みだったとか?

 うーん、でもコンクールが近いって麗奈が言ってたから、それは考えにくいなあ。

 なんて思いながらも、「まあなんか事情があるのかな」と考えた私は、麗奈には話しかけずに家へと向かった。

 真剣に練習しているようだったから、邪魔しちゃ悪いと思ったんだ。

 だけど、麗奈が家に帰ってくると。

「ただいまー! あー、今日も部活大変だったわー。疲れた疲れたー!」

 やけに大きな声で、麗奈はそう言った。

 私は眉をひそめる。

 まるでその言い方は、今まで部活に行ってましたって麗奈がアピールしているように思えたんだ。

 そう、河川敷でひとりで練習していたことを、家族に悟られたくないみたいに。

「れ、麗奈。今日もずっと部活だったの?」

 私は平静を装って、そう尋ねる。

 すると麗奈は、どこか大袈裟に苦笑いを浮かべてこう答えた。

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