千早くんは、容赦が無い
「そうだよ~。放課後から今までずっと練習! あー、肩凝ったしお腹すいたー! お母さんー! 今日のご飯なに~?」

 麗奈はキッチンの方へ向かってしまう。

 そしてもうすぐ夕飯だというのに、お菓子をつまんでお母さんに「こら、ご飯食べられなくなるよ」なんて言われていた。

 麗奈、なんで嘘つくんだろう?

 部活に行かないで、ひとりで練習してたよね?

 もしかして部活で何か嫌なことでもあったのかな……。

 麗奈のことが心配になってしまう私。

 だけど麗奈は部活に行っていなかったことを必死で隠そうとしている。

 その後の夕飯の時も、いつも通り元気で生意気な麗奈だった。

 でも、それって空元気なんじゃないの……?

 夕焼けの河川敷でひとりで練習していた麗奈を思い返すと、私は切ない気持ちになってしまう。

 麗奈に真実を聞きたい気持ちはもちろんある。

 だけど麗奈は、きっと私を始めとした家族にはそのことを知られたくないのだろう。

 そう思うと、私は麗奈に追及できなかったんだ。

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