千早くんは、容赦が無い
 まあ確かにその通りだから私は頷いた。

 でもなんで陸がそんなこと気にするんだろ?

 軽い足取りで、サッカー部仲間の元へと陸は戻っていった。

 するとそんな彼の背中を目を細めて眺めながら、桜子がこう呟く。

「……わかりやす」

 どこか意地悪く笑っている桜子。

 そんな桜子の表情の理由も言葉の意味も分からない私は、首を傾げる。

「え、どういう意味?」

「あは、別に。まあそんなことより、亜澄が興味ないなら『アオハル』についてはもう無理強いはしないけどさー」

 少し気になったけれど、桜子はすでにどうでもよさそうで、話題を変えてきたのでそれ以上は追及しないことにした。

「うーんそうだね、やっぱりどうしても私は『アオハル』をやる気にはなれないかも……ごめん」

「別に謝ることじゃないって。あ、じゃあ私の『アオハル』の話くらい聞いてよー! 最近以前にもまして『セン』くんと仲良くなってね!」

 うきうきした表情になる桜子。

 「セン」くんとは、「アオハル」を通して桜子が親密になった男の子のことだ。

 少し前から桜子がよく話題に出していたので私も名前は知っていた。

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