千早くんは、容赦が無い
 千早くんのその表情は、さすがに本当にこの状況を心から喜んでくれるんだって、理解した。

「そ、そっかあ」

 嬉しかったけれど、なんて言っていいかわからなくて。

 私は曖昧に笑って、それだけしか言えない。

 そこまでわたしとふたりきりになりたいって、思ってくれてたんだ……。

 そんなに私のことが、好きなの?

 どうして?

 と思う私だったけれど、ある事実を思い出してハッとする。

 違うよ、千早くんが好きなのは「ちぇりー」なんだ。

 それは私じゃなくて、桜子のことかもしれないんだよ。

 自分のことだなんて、まだ思わない方がいい。

 嬉しくなっちゃだめ、私。

 そんな風に密かに自分を戒めていると、観覧車が一周して私たちふたりはゴンドラから降りた。

「観覧車楽しかったな。亜澄、次は何乗ろっか。メリーゴーランドとかコーヒーカップ?」

 もちろん私の複雑な感情なんか知る由もない千早くんは、無邪気に笑ってそう尋ねてくる。

「うーん……。コーヒーカップがいいな」

 心にちくちくとした痛みを覚えながらも、私が作り笑いを浮かべてそう答えると。

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