千早くんは、容赦が無い

まさかのずぶ濡れ

 レストランを出た後。

 午前中、絶叫系を思う存分楽しんだ桜子と涼介くんは、午後はのんびりとしたアトラクションを楽しみたいなと言っていた。

 私はもちろん元々心臓に悪いものは楽しめない。

 また、千早くんは相変わらず「亜澄が一緒ならなんでも楽しい」というスタンス。

 四人の意見を総合し、私たちが乗ることを決めたのは園内の池を小型の船で回るアトラクションだ。

 ゆっくりと進む船だが、途中でサメが水上に飛び出すという、ちょっとしたスリルも味わえる。

 急降下や猛スピードが苦手な私でも、それくらいのドキドキなら楽しめる。

「サメ、結構いきなり出てくるらしいじゃん? 濡れちゃわないかなあ」

 乗船した船が進み始めてから、桜子が少し不安そうに言った。

 確かに、まだ六月だし服が濡れちゃったら寒くて風邪を引いちゃうかもしれない。

「俺、前に乗ったことあるけどちょっと水しぶきがかかるくらいだよ。そんなに気にしなくて大丈夫」

「そうなんだ、ならよかった」

 涼介くんの答えに安堵した様子の桜子。

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