君だけに捧ぐアンコール
「うそ、うそうそうそうそ!!!!」
「貴方!KEIなの?!」
「…知ってるのか」
え、こんな顔だったの?嫌味なやつだったのはショックだけど、でも、こんなに近くにいたなんて!それよりも今聞いた音が素敵すぎて!言葉がうまく出てこない!
「…っ!CD持ってますっ!この間のラフマニノフも聴きに行きましたっ!来月のコンサートもチケットもう予約しててっ…!!…っ!」
魔法使いみたいだと思った。
素敵な音楽を奏でる人。音が輝いている人。会ってみたい、どんな人だろうって。音が大好きだって推しが出来たって嬉しくてうれしくて。
「…うそ、うそ、そんな…」
もう一緒に暮らしていたなんて。
気付けば涙が零れていた。
「お、おい!」
「さ、サインとか嫌ですか?!もう一曲弾いてくださいとか、わがままですか?!あ、どうしよう手が震えて…!」
震える手に彼の手が重なる。もう一方の手で彼が涙を拭ってくれた。
推しにここまでしてもらえるなんて…!と、感激していた矢先。
チュ
「へ?」
「ん?」
キスされた。なぜこうなった。