君だけに捧ぐアンコール
 いつもは朝食の用意もあるので6時前には起床するが、なんだか今朝はいつもよりも太陽が上のほうにある気がする。まぶしい。

「んんん~」

 頭がズキズキする。飲みすぎた!どうやってここに帰宅したのか覚えてないが、この天井は実家だ。春乃先輩と別れた記憶もない。あとで謝ろう。
 今日は土曜日なので休日。でも隆文さんたちに朝食作らなきゃ。うーんあと5分。お布団がなんだかあったかい。寝返りを打つとなんだか硬くて温かい壁が…ん?んんん?

「?!?!?!」

目を開けると声にならない驚きでいっぱいになった。

「…はよ。」

「お、おおお、おはようございます・・」

 目の前に加賀宮さんがいるのだ。記憶が曖昧だが、バーであの失礼な奴に会って、そいつのことを春乃先輩が『KEI』って呼んでて…。KEIはかがみやさんだから・・・

「え、えええ、ばーかっていったの、加賀宮さんってこと?」

「あ、あぁ、あんときは、悪かった」

「え、でもなんで!いま、あれ?!」

思わず服装を確かめるも、お互いに昨日の服のままのようだ。ほっと息を吐く。

「何安心してんの」

「あ、そうですよね、私なんかに手を出したりしませんよね!あ、あの、酔っぱらってきっと私が面倒な感じでからんだんですよね?本当すみませんでした。部屋まで連れてきてくださって。自分で歩いたのか全く覚えてないんですけど、ちょっとお酒これから控えなきゃ──」

突然加賀宮さんの顔がアップになったかと思うと、唇に衝撃がはしった。
二度目の、キス。

「な、んで?」

「昨日我慢したから?」

 そこへ隆文さんが、「花音ちゃーん、かがみやくん?帰ってきてるの?」と呼ぶ声がした。加賀宮さんは初めていたずらに笑うと、また「ばーか」と言って去っていった。

 え、どういうことなの?
あのバーの嫌味なヤツがKEIで、KEIは加賀宮さんで…それで私、加賀宮さんと…。
ていうか、初めて!初めて笑った!
なんだあの破壊的なイケメン笑顔…。

 大きく高鳴る胸を押さえながら、二日酔いの頭では処理しきれない問題に頭を悩ませる。我慢って、なに?

 携帯を見ると、春乃先輩から説明を要求するメールも来ていて、さらに頭が痛くなったのだった。
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