君だけに捧ぐアンコール
5月になった。ゴールデンウィークのほとんどは、加賀宮さんのピアノを聴いて過ごした。師匠の隆文さんも一緒なので、特にやましいこともなく、家事をこなし、ピアノ漬けの日々。
キスについてモヤモヤもあるけど、正直推しの生演奏を聴き放題という最高な環境だしもう忘れることにした。
春乃先輩には隆文さんの生徒だから、面識が少しあるとだけ説明してある。一緒に暮らしてる、とは言えなかった。
そうしてむかえたKEIの演奏会。
KEIが加賀宮さんだと知る前に取ったチケットだ。今日の装いはいつも以上に綺麗に仕上げた。会社で宮崎君がデートかどうか疑って騒いだくらいだ。
今日の演奏会は、今話題の有名若手奏者を集めた合同コンサートだ。KEIは若手バイオリニストの椿原葵とチャールダーシュを演奏するそうだ。椿原葵といつの間に会わせる練習したんだろうと思ったりするとモヤっとするけれど、今は一ファンとして演奏だけを楽しみにしなければ。
ブザーが鳴る。
今日は、ピアノやバイオリンだけでなく、フルートやトランペット、チェロなど様々な楽器の若手奏者が集まっている。どの奏者も楽しそうに、自信満々に、煌びやかなライトを浴びて演奏していた。
やっぱり、加賀宮さんは私とは別の世界の人なんだと、ステージの光と自分のいる客席の暗闇に、大きな距離を感じる。
そしていよいよ、KEIと椿原葵のデュオ。
ゆっくりなテンポから速いテンポまで雄弁に語るバイオリンの音に合わせて、KEIのキラキラした音がピッタリのっていく。とても楽しい演奏で、二人も楽しそうだった。
(加賀宮さん、笑ってる…)
私は一度しか見たことのない笑顔。あのベッドから降りるときのいたずらな微笑みだけだ。でも今の彼は、ピアノの楽しさを全身で思い切り感じて思わずはじけ出たような無邪気な笑顔だ。
キスについてモヤモヤもあるけど、正直推しの生演奏を聴き放題という最高な環境だしもう忘れることにした。
春乃先輩には隆文さんの生徒だから、面識が少しあるとだけ説明してある。一緒に暮らしてる、とは言えなかった。
そうしてむかえたKEIの演奏会。
KEIが加賀宮さんだと知る前に取ったチケットだ。今日の装いはいつも以上に綺麗に仕上げた。会社で宮崎君がデートかどうか疑って騒いだくらいだ。
今日の演奏会は、今話題の有名若手奏者を集めた合同コンサートだ。KEIは若手バイオリニストの椿原葵とチャールダーシュを演奏するそうだ。椿原葵といつの間に会わせる練習したんだろうと思ったりするとモヤっとするけれど、今は一ファンとして演奏だけを楽しみにしなければ。
ブザーが鳴る。
今日は、ピアノやバイオリンだけでなく、フルートやトランペット、チェロなど様々な楽器の若手奏者が集まっている。どの奏者も楽しそうに、自信満々に、煌びやかなライトを浴びて演奏していた。
やっぱり、加賀宮さんは私とは別の世界の人なんだと、ステージの光と自分のいる客席の暗闇に、大きな距離を感じる。
そしていよいよ、KEIと椿原葵のデュオ。
ゆっくりなテンポから速いテンポまで雄弁に語るバイオリンの音に合わせて、KEIのキラキラした音がピッタリのっていく。とても楽しい演奏で、二人も楽しそうだった。
(加賀宮さん、笑ってる…)
私は一度しか見たことのない笑顔。あのベッドから降りるときのいたずらな微笑みだけだ。でも今の彼は、ピアノの楽しさを全身で思い切り感じて思わずはじけ出たような無邪気な笑顔だ。