君だけに捧ぐアンコール
 今朝の朝ごはんは目玉焼きとハムを乗せたトーストとコーヒー、カットしたオレンジとサラダというとってもシンプルなものだ。締め切り前なので、ものすごく手抜きにさせてもらっている。たまに隆文さんが作ってくれることもあり、家政婦というよりただの居候みたいになっているのが心苦しい。

「おはよ。」

慌ただしく出社準備をしていると、加賀宮さんが起きてきた。

「おはようございます!今日は早起きなんですね」

 ちょっと起こしに行って寝顔をのぞき見しようと思ってたのにと思いつつ、寝起きの色気がむんむんでキュンとする。髪の毛がぼさぼさなので、相変わらずこの状態ではKEIと同一人物だとわからないだろう。

「今度テレビに出る・・・みたいだから」

「テレビですか?!すごい!」

 前回の若手を集めたコンサートが話題になったようで、若手演奏家特集の番組に呼ばれたらしい。ゲストとして演奏するそうで、曲目やスタイリストとの打ち合わせで今日は早くから外出するそうだ。
 テレビ出演なんてきくと、やっぱり別世界の人だなぁと思う。だけど、家にいるときのぼさぼさ頭を見ると、少し安心する。愛おしさが湧き上がってくるのだ。

テレビ、放送が楽しみだな。

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