君だけに捧ぐアンコール
 同じ布団の中でゴロゴロとしながら、彼が私の手を握る。何か言いたげに思えて彼の顔を見ると、「あの、さ。」と切り出した。

「小さい頃のお前に、カノン弾いたの…俺」

「は、はぁ?!」

 とんでもない爆弾発言に驚愕する。

「泣いてた、パパとママにあいたいって」

「う、うそ!」

「ほんと。」

 いたずらに笑う彼に、私はただただ驚くしかない。
 何それ。偶然昔に出会っていて、知らずにファンになって、一緒に暮らして。

「な、なにそれ…。それって、それって」

「運命、かもな。」

 嬉しすぎてどうにかなりそうだ。彼の心の中もそうだったらいいのにと願いながら、彼のキスを受け止めた。
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