君だけに捧ぐアンコール
しかし、就職活動が始まると、世界は一変した。
当たり前のように音楽関係の仕事に就きたいと願っていた。だがそれは、選ばれた者だけで、音楽の道は険しかったのだ。
幼い頃から楽器に触れてきた天才たちがこの世には沢山いて、そうした一握りの天才だけが、演奏家としての立場を得ることが出来る。
私のような音楽がただ好きなだけの若造は、音楽の世界では通用しなかった。
そうして、かろうじて私が内定を勝ち取れたのは、そこまで大きくはないが、音楽情報誌なども手掛ける出版社だった。
私はそこで、街の情報誌を作成する部署に配属され、グルメ情報や美容、子育て施設の情報などを載せた小さな冊子を毎月発行している。
たまに演奏会などの音楽情報を載せることがあり、その記事を書く時は胸が高鳴る。
百瀬花音、27歳。私生活で音楽を奏でることはなくなったけれど、音楽は今も大好きだ。だから、春乃先輩やかつてのサークル仲間の音楽を続けているメンバーが誘ってくれる演奏会は喜んで聴きに行く。少しだけ羨ましいけれど、こうして客席で美しい音楽を聴くこともとっても幸せだから。
当たり前のように音楽関係の仕事に就きたいと願っていた。だがそれは、選ばれた者だけで、音楽の道は険しかったのだ。
幼い頃から楽器に触れてきた天才たちがこの世には沢山いて、そうした一握りの天才だけが、演奏家としての立場を得ることが出来る。
私のような音楽がただ好きなだけの若造は、音楽の世界では通用しなかった。
そうして、かろうじて私が内定を勝ち取れたのは、そこまで大きくはないが、音楽情報誌なども手掛ける出版社だった。
私はそこで、街の情報誌を作成する部署に配属され、グルメ情報や美容、子育て施設の情報などを載せた小さな冊子を毎月発行している。
たまに演奏会などの音楽情報を載せることがあり、その記事を書く時は胸が高鳴る。
百瀬花音、27歳。私生活で音楽を奏でることはなくなったけれど、音楽は今も大好きだ。だから、春乃先輩やかつてのサークル仲間の音楽を続けているメンバーが誘ってくれる演奏会は喜んで聴きに行く。少しだけ羨ましいけれど、こうして客席で美しい音楽を聴くこともとっても幸せだから。