幼なじみじゃ、いられない。

茶封筒を抱きかかえ、やっぱり付いてきてもらえば良かったと後悔する。


大地くんが出たら、どんな顔をすればいいのか分からない。
……ううん、大地くんじゃなくても。

幼稚園の頃は、それこそ毎日大地くんママにも会っていたけど、そういえばここ数年はめっきり会っていなくて、変に緊張する。


直接渡さず、ポストに入れてしまおうかと、一瞬考える。

だけど入れたとして、それをすぐに伝える手段がなくて。


急ぎ……だったら、まずいよね。

少なくとも先生は『今日渡しておきたかった』って、言っていたし。

中身は知らないけれど、なんとなく大事なものなのかなとは思っている。


あたしは「はぁ」と息をひとつ吐いた後、覚悟を決めるように目の前へ足を進めた。

そして、


ピンポーン。


少し震える指先で押したチャイムの音に、自分自身でビクッとする。


無意識に良くなる姿勢。

少し待っていると、ガチャガチャガチャッとインターホンが繋がる音がして。


「はい、どちら様で?」

「あ、あのっ、私葉月といいます。だ、大地くんのクラスメートでっ」
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