幼なじみじゃ、いられない。

繋がったのは女性の声。

緊張でドキドキしながら挨拶すると、「ちょっと待っててくださいね」と、返事があって。


「こんにちは」


少ししてから、ガチャッと開けられたドア。

出てきたのは大地くんのお母さん……よりも、お年を召した女性(ひと)


何となく見覚えのあるこの人は、大地くんのおばあちゃん……?


「あ、えっと、こんにちは。学校で先生に預かり物をして、大地くんに渡しに来ました!」


ペコッと頭を下げ、頼まれていた茶封筒を差し出す。

すると、大地くんのおばあちゃんらしき人は、「あらあら、わざわざありがとう」と受け取ってくれた。


大地くんが出なくて良かった。

少しホッとしながら、「それじゃあ、失礼します」と、一歩下がろうとした。

だけど、


「あ、待って。あの子いま出かけてるから、どうぞ中で待っていって」

「えっ、いや、あの、私はそれを渡しに来ただけなのでっ」


優しい笑顔で告げられた言葉に、あたしが慌てて首を横に振ると、「そう?」と、ほんの少し寂しそうな顔をした。
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