幼なじみじゃ、いられない。

そう、明日は2月14日。バレンタインデー。


「今年も大地に用意するの?」


静かな部屋に響いたりっくんの言葉に、ドキッと鼓動が跳ねる。


千明ちゃんも佳穂ちゃんも知らない、りっくんだけが知っている……あたしの気持ち。


あたしはずっと、幼稚園の頃から、大地くんに片想いをしている。


「ど、どうかな……ずっと渡せてないし、今年はさすがに用意しないかも。それに今日、新しい彼女が出来ちゃったみたいだし」


「ははっ」と軽く笑ってみせるけど、上手く笑えている自信はない。


幼稚園の頃からバレンタインには、大地くんにチョコを渡していた。

小学2年生までは普通に受け取ってくれて、何かしらお返しもくれていた。


だけど、小学3年生のバレンタイン。

チョコを渡したのは良いものの、それから大地くんは話してくれなくなった。

それが最後──。


それからも毎年用意だけはしているけれど、結局渡せずに自分で食べたり、家族に渡したり。

だからもう、さすがに今年は見切りを付けなきゃと思っている。

……こんな自分の気持ちにも。
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