幼なじみじゃ、いられない。

「やっぱやめた」

「え?」

「何もしないっていうの」


何を言われたのか理解するよりも早く、あたしの腕はさらに引き寄せられ──抱きしめられた。


「えっ、なにっ、離して!」


あたしは大地くんの胸を叩いて離れようとする。だけど、


「やだ」


抵抗すればするほど、ぎゅっと強くなる力。


「からかうのやめてってば! ほんとに!」

「あんまり騒ぐとバレるけど、いいの?」


大地くんの言葉に、ぐっと息を呑む。


ヴーヴーと鳴り続けている着信。

ほんの十数メートル先にはりっくんがいて、確かにすぐに見つかってしまう距離。


大地くんと抱き合っているところなんて、りっくんには絶対に見られたくない──けど。


「こんなの、大地くんが無理矢理してるだけでしょ!? あたしは別にっ」


りっくんに気付かれても構わないと、思いっきり振り払おうとした……はずだったのに、


「他の男とキスしたって言ったら、アイツどうするかな?」

「っ……」


グッと腕を掴まれ、わずか数センチの至近距離で言われた言葉に、あたしはピタリと固まった。
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