幼なじみじゃ、いられない。
***


「そっか……そうだったんだ……」


立ち入り禁止の屋上へと続く、階段の踊り場。

先生も生徒にも見つかりにくいその場所で、あたしは昨日のこと、今日までのことを美波ちゃんに話した。


「ごめんね、急にこんな話して……」


少し戸惑った様子の美波ちゃんに謝ると、「ううんっ!」と、首を横に振ってくれた。


「ひなちゃんが私に話してくれたことは、信頼されてるってことで、すごく嬉しいよ」


「でも……」と、一度私に浮かべた笑顔を美波ちゃんは曇らせる。


「ひなちゃんは藤沢くんのこと、本当にもう好きじゃないの?」

「っ……」


遠慮がちに、だけど真っ直ぐ聞いてきた美波ちゃんに、思わず言葉を詰まらせる。


大地くんのことは、もう好きじゃない。
そう思って、ここ最近は過ごしてきた。

だけど、昨日自分がとってしまった行動は──……。


「ごめん、ひなちゃんもそれが分からなくなって、困ってるんだよね」


何も言えずにいると、美波ちゃんはそんなあたしの気持ちを察して、静かに声をかけてくれた。そして、


「まだ誰とも付き合ったりしたことない私が、偉そうに言えることじゃないけど……正直、空井くんが可哀想だと私は思っちゃう」
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