幼なじみじゃ、いられない。

ふたりっきりの踊り場に、静かに響く言葉。


「浮気とか、そういうのじゃないってことは分かってる。でも、昨日のこととか何も知らずに、ひなちゃんのことを心配してる空井くんが可哀想だな……って」

「……そう……だよね」


美波ちゃんの言葉は、突き刺さるようだった。

全部、その通り。
言い返す言葉なんて見つからないし、あたし自身もそう思ってる。

だから、後ろめたさで連絡することが出来ずにいた。


「このままじゃ、りっくんに失礼だよね……」


ずっと寄り添ってくれているのに。
あたしを信じて心配してくれているのに。

──あんなに真っ直ぐ想ってくれているのに。


「美波ちゃん、ありがとう。ちょっと決心ついた」


あたしはポケットからスマホを出す。


本当のことを正直に話すのは、すごく怖い。
今度こそ愛想を尽かされてしまうかもしれなくて。

りっくんに嫌われてしまうかも……って思ったら、すごく怖い。


だけど、


「今、美波ちゃんに話したこと、ちゃんとりっくんにも話してみる」


あたしが決意して呟くと、「うん、頑張れ」と、美波ちゃんは微笑んで頷いた。
< 130 / 138 >

この作品をシェア

pagetop