幼なじみじゃ、いられない。
ふたりっきりの踊り場に、静かに響く言葉。
「浮気とか、そういうのじゃないってことは分かってる。でも、昨日のこととか何も知らずに、ひなちゃんのことを心配してる空井くんが可哀想だな……って」
「……そう……だよね」
美波ちゃんの言葉は、突き刺さるようだった。
全部、その通り。
言い返す言葉なんて見つからないし、あたし自身もそう思ってる。
だから、後ろめたさで連絡することが出来ずにいた。
「このままじゃ、りっくんに失礼だよね……」
ずっと寄り添ってくれているのに。
あたしを信じて心配してくれているのに。
──あんなに真っ直ぐ想ってくれているのに。
「美波ちゃん、ありがとう。ちょっと決心ついた」
あたしはポケットからスマホを出す。
本当のことを正直に話すのは、すごく怖い。
今度こそ愛想を尽かされてしまうかもしれなくて。
りっくんに嫌われてしまうかも……って思ったら、すごく怖い。
だけど、
「今、美波ちゃんに話したこと、ちゃんとりっくんにも話してみる」
あたしが決意して呟くと、「うん、頑張れ」と、美波ちゃんは微笑んで頷いた。