幼なじみじゃ、いられない。

「ごめん、遅くなって」

「ううん、全然大丈夫!」


ガタッと音を立てて立ち上がると、りっくんは大きく肩を上下させて、息も切れていた。

急いで来てくれたこと、見てすぐ分かる。


「忙しいのにごめんね、何か飲み物──」

「いや、大丈夫」


あたしがカウンターの方へ注文しに行こうとすると、りっくんはあたしの腕を掴んで引き止めた。


「話があるんでしょ?先に聞くよ。それとも、少し落ち着く時間が欲しい?」

「っ……」


いつだって何でも、お見通しのりっくん。

言葉に詰まるあたしがこくんと頷くと、りっくんは優しく微笑んで。


「じゃあ座って待ってて。自分で行ってくるから」


あたしの頭をポンポンと軽く撫で、カウンターの方へと歩いて行った。


残されたあたしは、ストンとまた椅子に座る。


りっくんはきっとあたしの顔を見て、緊張していることに気付いてくれた。

りっくんのことだから、話の内容についても薄々勘付いているかもしれない。

それでも、変わらず優しくしてくれて。


ずるいけど正直に言えば、そんなりっくんを失いたくないとも思ってる。

でも……。
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