幼なじみじゃ、いられない。

「やっぱりまだ、あいつのことが好き?」


あたし真っ直ぐ問いかけてきた、りっくん。

その瞬間、りっくんが勘違いしていることに気付いた。


「ちっ、違うのっ!」


あたしはぶんぶんと首を横に振る。


「大地くんのことがまだ好きとか、そういうことじゃなくてっ……」


自分の中で、大地くんのことはもう『過去』にした……そのつもり。


だけど、不意に思い出す自分の今までの行動。


大地くんの一言一行に動揺して、昨日抱きしめられた時には振り解けなかった。

それなのに、本当に『もう好きじゃない』って言える?


「ひな……」


黙り込んでしまったあたしの名を、りっくんが静かに呼ぶ。


「俺はずっと、ひなの恋が上手くいくように願ってた。ひなの幸せだけを願ってた。だけど今、ひなと付き合うことが出来て……もう手放したくないと思ってる」


ガヤガヤと、周りの音が騒がしいはずのカフェなのに、りっくんの声だけが響いて聞こえる。


「今はまだ大地に気持ちが残っててもいい。俺のことだけ見てなくてもいいから……一緒にいてほしい」


「もちろん、ひなが嫌じゃなければだけど」と、りっくんは続けて苦笑した。
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