幼なじみじゃ、いられない。
君と知らない過去。
「あ、おはよう、ひな」
朝、「行ってきます」と家を出て、少し歩いた先。
いつもの曲がり角を曲がった先に、りっくんの姿。
「おはよう」と、軽く微笑んで挨拶を返すと、りっくんも微笑んで、片手を差し出した。
手を繋いで歩く、いつも通りの朝。
「ひな、今日って帰り遅くなりそう?」
「ううん、多分そんなことないけど、どうして?」
「良かったら母さんが、一昨日のレッスンの穴埋めにおいでって」
昨日は正直、別れる覚悟で話をした。
だけど、あたし達の関係は、何も変わっていない。
『今はまだ大地に気持ちが残っててもいい。俺のことだけ見てなくてもいいから……一緒にいてほしい』
思い出すのは、昨日の言葉。
あんな風に言われたら、とても『別れる』なんて言えなかった。