幼なじみじゃ、いられない。
「わっ、かわいいっ!二人ともありがとう!」
「ううん、うちら料理とかさっぱりだから、市販のやつだけどね」
「大したものじゃなくてごめんね」と謝るふたりに、ふるふると首を横に振る。
市販でも何でも、友チョコは嬉しい。
貰ったチョコをぎゅっと抱きしめて、もう一度ふたりに「ありがとう」と、伝えようとした時だった。
「やっぱりわたし、藤沢くんにチョコ渡してくるっ!」
ガタンッという音と、聞こえた大地くんの名前。
反射的に声の方見ると、クラスメートの女子が赤いラッピング用紙で包まれた箱を持って、立ち上がっていた。
「え、本気で行くの?」
「うん、だってせっかく用意してたのに。彼女がいる人に渡しちゃダメってルールはないでしょ?」
「そりゃあまぁ、そうだけど……」
「というわけで、ついて来て!」
「えぇ……」
決して乗り気ではない友達の首根っこを掴んで、教室を出て行くクラスメート。
「……すごいねぇ」
と、その様子に呟いたのは佳穂ちゃん。