幼なじみじゃ、いられない。

今までりっくんを相手に緊張したことなんてなかったのに、今日はとても緊張する。


りっくん、まだかな……。


さっきメッセージを送ったら、『もうすぐ着く』と、返事があった。


伸ばしかけのミディアムボブの髪を、手で軽く直して、りっくんが歩いてくるだろう方を見る……と、


えっ……!?


ひとり、歩いて来た男の子の姿に、あたしはバッと顔を逸らした。


こっちに向かって歩いてくるのは、悔しいくらいよく知っている人。

だけどそれは、りっくんじゃない。



同じ高校の制服を来た彼は──大地くん。



何で今日に限って一人なの?
バレンタインなのに、椎名さんと一緒じゃないの?

……なんて、あたしには関係のない話。


近付いて、次第に大きくなる姿にドキドキと胸の鼓動が速くなるけど、この感情も無駄。

大地くんの瞳には、あたしは映らない。


だったら早く通り過ぎてと、俯いた時だった──。
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